東京慈恵会医科大学附属柏病院小児科 診療部長挨拶

診療部長挨拶

【東京慈恵会医科大学附属柏病院について】
 附属柏病院は、昭和62年に千葉県北西部に位置する柏市に東京慈恵会医科大学4番目の附属病院として開設されました。
当時の柏市は住宅・商業都市として発展途上の地で、交通の便として千代田線の相互乗り入れや常磐高速道路の開通などの好条件が重なり、昭和40年当時の人口は11万人足らずでしたが昭和60年には人口27万人に急増し、さらに現在(平成22年4月)では人口40.0万人に至っています(年少人口13.7%-11位/60千葉県内市町村、生産人口67.0%-14位/60千葉県内市町村)。

 学祖 高木兼寛先生の「病気を診ずして病人を診よ」の教えより、質の高い医療を実践し、医療人を育成することにより、社会に貢献し、患者さんや家族から信頼される病院をめざすという東京慈恵会医科大学の病院理念に基づき開設されました。
柏病院は千葉県東葛北部医療圏(柏市、流山市、野田市、松戸市、我孫子市)に位置し人口約135万人に対する中核病院であり、救命救急センター、地域がん診療連携拠点病院、災害拠点病院、東葛北部地域難病相談・支援センター、エイズ治療拠点病院などの指定もされています。

このように先進医療を提供する地域に根ざした大学病院という役割を担うとともに、急性期の医療機関として地域の病院と連携を図り、東葛北部地域の中核病院としての機能を提供しています。
また同じ敷地内には様々な臨床研究および基礎研究に対応できる臨床医学研究所ならびに慈恵柏看護専門学校が併設され、学内では柏キャンパスとして親しまれています。

 柏病院の病床数は開院当初361床でスタートし、平成2年に635床、平成9年に640床、平成27年4月には新橋の附属病院(本院)に次ぐ664の病床を有するようになり、現在29診療科と12中央診療部門で構成され、スタッフとして1,300人以上が働いています。

【柏病院小児科の現状】
①病棟部門:
小児科は病院開設時に22床のスタートでしたが、平成3年には小児領域の外科系の診療も加わり、多くの小児患者の入院を受けるようになり49床(うち小児科41床)となりました。
その後柏市の右肩上がりの人口増加に並行して、近隣の開業医/病院との医療連携も整備されご紹介患者も増加し、さまざまな疾患、多くの症例を経験させていただくようになりました。

入院患者数は、開設時の1987年248人、1990年302人、1995年461人、2000年549人、2005年666人、2010年963人、2011年1072人、2012年1034人、2013年903人、2014年869人、2015年933人、2016年1010人、2017年1020人、と近年では1000人を超える入退院患者を数えております。

我々の小児病棟には急性感染症患者の入院が最も多いのですが、その他、腎臓疾患、神経疾患、血液疾患、呼吸器疾患、循環器疾患、消化器疾患、代謝内分泌疾患などの多種多数の慢性疾患患者、また東葛北部地域の問題の一つとしてNICUの病床数が少ない点がありその欠点を補うように多くの新生児疾患の入院があります。

当科の特徴として、年間40~60例の川崎病患者の入院があり、本疾患に対して積極的な治療経過観察を行うことにより予後の著明な改善が得られています。
2006~2013年の8年間の358例を検討したところ冠動脈病変合併例3.6%(13例―拡張12例、瘤1例)という結果を得ることができました。

また我が国では専門医が少ない小児期発症の膠原病患者に関しても、日本リウマチ学会指導医、小児リウマチ学会理事などを配し、近隣の多くの施設から多数の患者をご紹介いただき、外来/病棟での診療を行っています。



②外来部門:
外来総患者数は20,000人前後/年、初診患者は2,000人前後/年で安定しています。
また紹介率は医療法/保険法ともに75~90%を維持しており、東葛北部地域の中核病院とした役割を果たすべく、しっかりとした医療連携の関係を保ちながら日々の診療を行っています。

近隣の先生方からの緊急を要する紹介患者については、原則断らない、さらに迅速に対応するように心がけています。このような積極的な姿勢が地域の基幹病院としての機能を維持できる要因であり、その結果多くの症例を勉強できる点にも結び付いていると思います。

 午前中は一般外来を行い、午後からは乳児健診、予防接種、循環外来、血液外来、神経外来、腎臓外来、代謝内分泌外来、膠原病/免疫異常外来、心理外来等の専門外来を専門医が中心になって予約制で行っています。
緊急性を有する救急外来患者については午前、午後を問わず救急当番を置き迅速な対応をこころがけています。
また夜間救急患者に関しても積極的に受け入れを行っており、夜間の病棟入院もスムースに行われるようにシステムを構築しています。



③実績と研究:
2015年度学会発表数:日本小児科学会3演題、日本小児科学会千葉地方会7演題、日本小児腎/腎不全学会2演題、日本小児感染症学会3演題で、合計15演題。
2016年度学会発表数:日本小児科学会4演題、日本小児科学会千葉地方会4演題、日本小児神経学会1演題、日本小児リウマチ学会1演題、日本小児感染症学会1演題で、合計11演題。
2017年度学会発表数:日本小児科学会3演題、日本小児科学会千葉地方会3演題、日本小児神経学会1演題、日本小児感染症学会1演題で、合計8演題。

 以上のように、症例報告、臨床検討等を中心に毎年多くの報告を積極的に行い、スタッフ全員で臨床に取り組んでいます。

 また研究については、以下のような臨床を中心とした内容をテーマに各医局員が検討しています。
○小児膠原病の疾患活動性の評価について
○治療抵抗性の各種膠原病における免疫抑制剤の適応/治療法の検討について
○個々の小児膠原病患者に対する遺伝子も含めたtailor-made治療の検討
○小児期発症シェーグレン症候群の臨床病像の検討
○新生児/乳児期の腸内細菌叢の定着に影響する要因の解析
○柏市周辺地域で経験されたStreptococcus pneumoniae、Haemophilus influenzaeに対する耐性遺伝子による解析
○小児期敗血症原因菌の遺伝子検索―マルチプレックスPCRを用いた検討
○川崎病の病態、治療抵抗の因子についての検討
○川崎病の疾患活動性についての検討
○各種炎症性疾患における血球系とヘプシジンの関係について
○病原遺伝子同時検出を用いた冬季小児呼吸器感染症の起因病原体検索の試み

④スタッフ:
柏病院は開院当時より症例が豊富であるといわれており、さまざまな領域の症例を経験できる、現在では数少ないgeneralistの育成に適した環境にあるといえます。
特に柏病院には多くの臨床経験を積んだスタッフが常在しており、さまざまな疾患に対して研修医やレジデントと一緒に勉強していくスタイルが根付いており、常に年齢差を感じないdiscussionが生まれています。

また柏病院の小児科医局は“スタッフルーム”という診療科をすべてひとまとめにしてopen な環境の器に入れたため、各科の連携は深く強固となり難しい症例や高度な救急医療を必要とする症例に対しても、各科の協力のもとで何とか解決しようというパワーが生まれ、その協力体制がより当科の診療に厚みを持たせていると思います。

 膠原病、自己免疫疾患、さまざまな感染症、血液/腫瘍疾患、神経疾患、腎疾患、内分泌疾患等々の小児科医にとっての一般的な疾患が初発時から来院し、また本でしか見たことのないような病気で鑑別疾患に苦慮する経過を有した患者も多く来院し、さまざまな分野のsubspecialtyを目指す若手小児科医にとっても多くの経験を得ることができる病院であると言えると思います。

東京慈恵会医科大学附属柏病院
小児科診療部長 和田靖之